URCF実空間メディアワーキンググループセミナー 「実空間メディアを考える Vol.2」

日時:2017年9月8日(金)
会場:(株)フォーラムエイト セミナールーム

超臨場感コミュニケーション産学官フォーラム(URCF)実空間メディアワーキンググループセミナー「実空間メディアを考えるvol.2」が表技協共催で開催されました。
参加者は27名で、講師によるセミナーに加えて、超高速プロジェクタによるTシャツへのプロジェクションマッピングやルームコーディネートアプリ「RoomCo AR」のデモもあり、盛況のうちに終了しました。
HMDに代表されるAR/VRヘッドセットの市場動向とHMDの機能面における諸課題という基礎的話題から、実空間メディアを進化させるプロジェクタ高速化の実験と実際の部屋に家具を自由に配置できるARアプリという応用事例まで、幅広い視点から今後の展開が議論され多くの情報を共有することができました。
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【 講師によるセミナー 】

■「AR/VRヘッドセットの市場動向と海外のユースケース」

  IDC Japan株式会社 菅原 啓 氏
 20170908130712(1)・VR-HMDが世界市場を牽引し、AR-HMDは遅れて伸長。
 ・9/8時点の予測では、2021年には併せて約9,500万台、AR-HMDが約1/4。
 ・日本市場は伸び悩み。AR/VR-HMDの対世界市場構成比は1%程度と小さい。
 ・世界の年成長率は、日本に比べVRが1.2倍、ARが1.8倍と大きく、日本は取り残される懸念がある。
 ・日本で関連市場が遅れている理由:(ARは特に)使い方がよく分からないこと・値段が高いこと
 ・海外では、特に後進国で次世代産業の種としてAR活用が進んでいる。これは、有線電話のインフラが未整備だった国で携帯電話が瞬く間に広まった現象と似ている。日本での市場拡大も、まずはユーザの裾野を広げることが大事で、そのためにも、便利さはもちろんのこと、役に立ったり面白かったり、を実感できる人をどこまで巻き込めるかに掛かっていると思われる。

■「HMDを中心とした没入型映像システムに関する戦略策定事業の成果概要」

  早稲田大学 基幹理工学部 表現工学科教授 河合 隆史 氏
河合氏 ・「VR酔い」の原因仮説として「感覚不一致」(=新たな空間での視覚入力が蓄積パターンと異なる際の、中枢での再構築の相違レベルによって生起される不適応現象)が有力だが、VR酔いの軽減に有効であることから注目している。
 ・VRにおいては、画質の向上が、必ずしも体験の向上につながらない場合がある。
 ・評価実験の結果から、360度映像では、視点の移動が大きい条件において、視線が画面の中央(視点の進行方向)に集中する傾向がみられた。
  VR酔いの症状には個人差が大きく、本実験では約4割の参加者において顕著であった。
  本実験では、コンテンツの種類と体験する環境(椅子の回転の有無)を条件としたところ、いずれもVR酔いの症状に与える影響に差異が認められた。
 ・デジタルコンテンツ協会が今年6月に発表した「VRビジネスを始める前に押さえておくべき6つのポイント」には、以下の点が挙げられている。
 ① コンテンツの分析:空間の構成や対象の配置、時系列的な変化の定量化
 ② 数値的な枠組み:閾値間の相互作用への留意
 ③ コンテンツの評価:標準化あるいはコンセンサスの得られた手法の確立
 ④ 利用環境:ユーザの行動や姿勢に影響する環境要因への配慮
 ⑤ 個人差:ユーザに対する配慮と同時に、ユーザ自身の意識喚起
 ⑥ 感覚入力としての枠組み:感覚不一致の最適化の重要性

■「ビジョン・プロジェクタの高速化と実空間メディアの進化」

  東京大学 情報理工学系研究科システム情報学専攻講師 渡辺 義浩 氏
渡辺氏 ・「SENSING」:高速の実空間把握 → 例えば、図書の高速スキャニング(デジタルアーカイブ)
 ・「REACTION」:高速の実空間制御 →「プロジェクタ」を光で知覚上の現実を変質させられる装置として発展させる。
 ・「ダイナミック・プロジェクションマッピング」:現実の「変形するもの・動くもの」を赤外線マーカーを利用して高速トラッキング、高速で投影して現実を拡張させる。
 ・「リアリスティック・ディスプレイ」:光で知覚上の現実を変質させる。→ 本当はチカチカしている蛍光灯がそう見えないのはヒトに「臨界融合周波数」があるため。高速点滅のパターン化されたライトを投影させて、ライトが当たった部分の残像を利用して新しい物体が見えるようできる。ライティングのパターンを変えることで、リアルな物体を何通りにも重ね合わせ、実在しない物体を見せることが可能になる。

■「理想を現実で確認するルームコーディネートアプリ ”RoomCo AR” 」

  株式会社リビングスタイル 園田 一磨 氏園田氏
 ・床に置いたマーカーにより床面・サイズを認識し、自己位置・距離を推測する 技術(SLAM)により、ルームコーディネートをシミュレーションすること ができるアプリ「RoomCo AR」。家具を買うときの2大失敗;「大きすぎた」「イメージと違った」を解決できる。18ブランド、30万以上のバリエーションのアイテムから選べる利便性を持つ。
 ・10年以上「3Dシミュレーター」を提供し続けて3D商品データベースを構築、26社/100万点を超えるまでのデータベースに成長している。
 ・メーカーを超えたアプリのため、ビッグデータ分析が可能。違うメーカーのアイテムの組み合わせ情報も分析できる。

【 講演者と参加者によるラウンドテーブル 】

  モデレーター:町田 聡 氏20170908155632 
■「実空間メディア」とは「実空間への情報の多重化(重畳)」と捉えられる。リアルの上にヴァーチャル、ヴァーチャルの上にリアル、という重ね方で、何が「Augment」拡張されるかが決まってくる。
■ 今は様々なXRが登場し「過渡期にある」という点でセミナー講演者の認識が一致した。そういう意味では、私達がどのような未来を志向するのか「イマジネーション」が問われている。
■ 日本の問題点として、AR/VRに本腰を入れているのがベンチャー主体で、大企業が遅れているという構造的な側面が大きく存在する。
■ XRでは「触感性」がキーワード。直感を刺激するのにグローブ・リング等のデバイスに頼らない方法が関心を集めている。その点では、ジェスチャー入力も大いに検討の余地がある。
 

【 デモの様子 】

■「高速プロジェクタ DynaFlash」による揺れるTシャツへのプロジェクションマッピングとスマホで体験する「RoomCo AR」。どちらも参加者の大きな興味・関心を集め、体験に盛り上がっていました。
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